事例インタビュー

「AI時代に戦えるのは、独自性のある一次情報」── スマートキャンプのSaaS比較メディア BOXILが実践する、AIインタビューを起点にした取材・記事化ワークフローの自動化

SaaS比較サイト「BOXIL」を運営するスマートキャンプ株式会社。オーガニック流入を拡大するために独自性のある一次情報コンテンツを武器とする同社にとって、導入事例インタビューは検索戦略の根幹を担う重要なコンテンツです。

しかし、対人インタビューは1件あたり最低30分以上の工数がかかり、インタビュースキルを持つ人材も限られる。候補者は集められるのに処理しきれない、という状況が続いていました。

そこで導入したのが、コルクのAIインタビューです。ユーザー向け導入事例だけでなく、ベンダー向け取材という新たな商材としても活用が広がり、取材から記事化までのワークフロー全体が変わりました。その変化に関する工夫やAIインタビューの活用方法を、BOXILカンパニー メディア戦略グループ グループマネージャーの福原 望氏に、弊社カスタマーサポート・佐々木から詳しく伺いました。

スマートキャンプ株式会社

スマートキャンプ株式会社

コルク
コルクインタビュー
AIインタビュー
目的・課題
  • 取材から文字起こし・記事化までのワークフローに多大な工数がかかり、対人インタビュー実施自体がボトルネックになっていた
  • インタビュースキルを持つライターの確保が難しく、担当者に属人化していた
  • 候補者は集まるが処理しきれず、記事化まで至らないケースが多発していた
効果
  • AIインタビューによって、取材・収集・文字起こしの工数が大幅に削減され、担当者は記事の品質向上に集中できる体制に
  • ユーザー向け導入事例インタビューに加え、ベンダー向け取材にも展開し、活用範囲が拡大
  • Claudeを組み合わせた記事化フローを構築し、一次情報を活かしたコンテンツを効率的に制作

■ AI時代のSEOを制するのは「独自性のある一次情報」 — BOXILのコンテンツ戦略

【インタビュイー プロフィール】
福原 望氏: BOXILカンパニー メディア&マーケティングディビジョン メディア戦略グループ グループマネージャー
BOXILカンパニー メディア戦略グループ グループマネージャー:福原 望氏

─ まずは、BOXILの事業概要と、福原さんが担われているお仕事について教えてください。

福原氏:「BOXIL」はSaaS比較サイトで、ビジネスパーソンが新たなサービスの導入を検討する際に訪問するプラットフォームです。

私が所属するメディア戦略グループのミッションは、オーガニック流入を増やすことで、前職からSEOに関わり10年ほどになります。スマートキャンプには一昨年の10月に入社し、現在1年半ほどです。

─ 導入事例コンテンツは、その中でどのような位置づけですか?

福原氏:オーガニック流入に直接つながるメインの軸は「比較」や「おすすめ」といった検索需要の高いキーワードとなりますが、それらの検索順位を上げていくための土台として、サイト自体の評価を高める独自コンテンツが必要です。実際に導入したユーザーの声や事例は、一次情報として、比較記事などへの引用を通じてサイト全体の評価底上げにつながっています。

直近はAIの普及に加え、Googleのアルゴリズムの高度化によって、ただ情報をまとめるだけのコンテンツでは戦えない時代になってきています。「我々しか持っていない情報・見せ方」を提供していかなければいけないという意識が強まる中で、導入事例コンテンツの重要性はますます高まっています。

ユーザーへのインタビューでも、SaaSを選ぶ際に実際の導入事例や口コミを参照するという声が多く、事例の数と多様性がサイト全体の競争力を左右すると感じています。

■ 「候補者は集まるのに、処理しきれない」 — 取材ワークフローを圧迫していた工数の壁

─ コルクを導入される前は、どのように事例インタビューを運用されていましたか?

福原氏:オンラインでの対人インタビューを行っていました。候補者自体は集めようと思えば集まるのですが、数人で処理しきれないという状況でした。当初は事例記事として制作するというよりも、まずはユーザーの声を聞いてコンテンツ制作に活かすという目的でインタビューを始めた段階でした。導入事例の記事として本格的に制作しようとなったのは、コルクインタビューを導入してからです。

─ 具体的にどのような課題がありましたか?

福原氏:
最も大きかったのは、1件あたり少なくとも30分はかかり、前後の段取りも含めると相当な時間が取られるという点です。なかなか本数を増やせませんでしたし、工数もかかってしまう。

加えて、インタビュー自体がスキルを要する作業であるという点も課題でした。ライター全員ができるわけではなく、対人で話すことが得意でないメンバーも多い。

インタビューができる人材を確保すること自体が大変で、そのような人材の単価も高い。量も増やしたいが質も下げたくない、という状況の中で、工数を削減できる手段を探していたところ、AIインタビューという選択肢にたどり着きました

■ 決め手は、一次情報としての「生の声」をAIが引き出せること

弊社 カスタマーサポート:佐々木

─ 弊社を知ったきっかけや、コルクを選ばれた理由を教えてください。

福原氏:当時はAIを活用したインタビューツール自体がほとんどなく、「AIがインタビューしてくれるサービスがあるのでは」と検索したところ御社を見つけた形です。比較検討というよりも、まず使ってみよう、という判断でした。

佐々木(Quest Research):アンケートフォームではなく「インタビュー形式」を選ばれたのはなぜでしょうか?

福原氏:フォームだと質問に対して表面的な回答で止まってしまいがちで、もっと掘り下げたい箇所で深掘りができません。

逐次的に質問してくれるインタビュー形式のほうが、生の声に近い深い回答が得られるという期待がありました。また、文章で書くのと口頭で話すのとでは引き出される内容が異なるため、会話形式で答えられるという点も重要な要件でした。

─ 実際に使ってみて、いかがでしたか?

福原氏:コンテンツの本数としても増やすことができましたし、想像以上に、しっかりと掘り下げてくれている印象でした。

インタビューの内容自体はすでに一次情報なので、記事化の工程では語られた内容を、読みやすい形に構成し直すことに集中できます。ゼロから示唆を組み立てるコンテンツとは工程が異なるため、AIと組み合わせる相性が非常に良い領域だという発見がありました。

■ 「AIインタビューで取材→Claudeで記事化」BOXILが構築した一気通貫ワークフロー

─ 現在はどのような用途でコルクのAIインタビューを活用されていますか?

福原氏:大きく2つあります。1つ目はBOXILのユーザー向け導入事例インタビューです。
インタビューに回答いただく前に属性情報をご提供いただき、AIインタビューで事例を取得、その後AIを使って記事化するという流れで運用しています。

2つ目はBOXILに掲載いただいているベンダー様への取材です。「自社サービスの強みは何か」「他社との差別化ポイントは」「今後の展望は」といった内容をAIインタビューで取材し、記事化したものを商材として販売しています。
直近では2026年上半期の資料請求数ランキングの受賞企業様へのインタビューにも活用しました。

─ 取材後、記事化はどのように進めているのですか?

福原氏:コルクで取得した文字起こしデータをスプレッドシートに貼り付け、Claudeに記事の叩き台を作成させるという流れです。そのたたき台をライターが整えて、編集が最終チェックし、公開します。

以前は、会社として利用を許可しているAIツールをどう使うかを、各自にお任せしていました。ですが、同じAIツールを使っていても、どのような流れで、どのような指示を出すかで、成果物のクオリティは変わってきます。
ライティングスキルが人によって異なるように、AIを使って文章を作るスキルも人によって差が出ます。そのため、たたき台をAIで作成するところまでは編集部側でコントロールするようにしました。これをベースにライターにととのえていただく流れの方が、品質が安定しやすかったです。

会社全体としてもAI活用を積極的に推進しているので、こうした体制づくりも進めやすい環境でした。

─ 工数の変化はいかがですか?

福原氏:最も大きかったのは、移動・取材・文字起こしの時間がそのまま不要になったことです。
今まで取材であれば行って帰って移動で1〜2時間、取材で1時間、そこから文字起こしして、という流れがなくなって、文字起こしデータから記事化することに集中できるようになったのが一番です。
これが弊社として本当にやりたかったことで、コルク導入によってそれが実現できました。

インタビュー自体がスキルを要する作業なので、ライター全員ができるわけではありません。その部分をまるっとお任せできることで、「ヒアリングはAIが担い、人間は記事の品質を高めることに集中する」という役割分担ができるようになりました。

■ 「AIだから答えやすい」 — 生の声を引き出す、意外な強み

─ AIインタビューならではの価値を感じた場面はありますか?

福原氏:対人ではないので、間違えても大丈夫、言葉が詰まっても大丈夫、調べながら答えても大丈夫という安心感があることで、回答者がリラックスして答えてくれる傾向があると思います。

インタビューを受ける側の心理的ハードルが下がるというのは、AIインタビューならではの利点です。

佐々木:弊社の市場調査でも同様の声をよくいただきます。対人だとどうしても場の雰囲気や相手への気遣いが入ってしまうことがあるので、AIだからこそフラットに本音が出やすいという側面は確かにありますね。

記事の品質という観点では、読者からの反応はいかがでしょうか。

福原氏:インタビューの内容自体は、話されている内容を人が加筆・整文しているものなので、違和感はそれほど出ていないと考えています。

記事のクオリティは最終的に人間が担保しているからこそ、信頼性を維持できると思っています。大切にしているのは「体温を感じる文章にすること」で、叩き台はAIが作っても、文章の構成や言葉の選び方は人間が仕上げるという役割分担を続けています。

■ 「すべてを、AIで代替しない」 — 品質を担保する運用のコツ

─ 実際に運用してみて、うまく使いこなすためのコツはありますか?

福原氏:最初のインタビュー設計だけは必ず人が行うということです。最終的にどういうアウトプットを出したいかを明確にして、そこから逆算して何を聞けばよいかを設計する。
この部分をAIに任せきりにすると、それらしい内容にはなっても誰にも刺さらないものができてしまいます。

佐々木:まさに弊社でも同じ考えを持っています。
AIリテラシーよりも、まず業務知識と目的意識があること、そしてAIをコントロールする側に回れるかどうかが重要で、AIはあくまで補助なんですよね。運用の平準化という観点では、どのような工夫をされていますか?

福原氏:スキルや経験のある担当者が最初の設計とプロンプトを整備して、その後は経験のないメンバーでも同じクオリティで運用できる仕組みを作ることが重要だと思っています。
質問のフォーマットや指示するプロンプトを整備し、誰でも一定品質で回せる体制にしています。

スペシャリストが作るものを100点とすれば、スキルのない人がAIを使って50点に届くことはある。ただし、100点のものを作れる人がAIを適当に使っても100点は出ない。
AIで100点を出すには、知見のある人が適切な情報と指示を渡さなければいけません。また、最終的に内容を人が精査する工程も不可欠です。AIをコントロールする人間の質が、アウトプットの質を決めると感じています。

■ 「構想するのが人で、形にするのがAI」 — 今後の展望

─ 今後さらに活用を広げていきたい領域はありますか?

福原氏:自社ユーザーへのアンケートにも活用できると考えています。今はメールで送ってご回答いただく形ですが、サイト内でその場でインタビューが始められるような体験ができると、回収率の向上が期待できます。
アンケートフォームに回答するくらいの手軽さで開始できるようになると良いと思っています。

また、ベンダー様に対して「ユーザーの声を直接聞ける機能」として提供するような展開も面白いと考えています。

佐々木:その方向性は弊社としても非常に共感しています。インタビューの入り口をもっと軽くしたい、という点はご要望として開発側にも積極的に伝えていきたいと思います。AIとコンテンツ制作・業務の関係について、将来的にどのようなビジョンをお持ちですか?

福原氏:AIがさらに進化しても、「どういう方向性で、誰に向けた記事を作るか」という指針を最初に示す人は必ず必要だと考えています。
AIが得意なのは既存の情報をまとめ直すことで、そこにない情報、自分たちにしか持てない一次情報は、AIでは生み出せません。

SEOでもLLMO対策でも、今後重要になるのは独自性のある一次情報だと言われています。「構想するのが人で、構成して形にするのがAI」というアプローチがますます重要になっていく中で、コルクの役割はさらに大きくなっていくのではないかと思っています。

─ Quest Researchへの期待や、改善してほしい点があればお聞かせください。

福原氏:現在は市場調査向けという印象が強いUI/UXになっているため、コンテンツ制作用途を想定した見せ方や設計に対応できるようになると、より使いやすくなると思います。
例えば、インタビュー開始時に「これは導入事例を作るためのインタビューです」と伝えられるような設定ができると、受け手側の理解が早まります。インタビュー内で必要な事前情報を収集できる機能なども、実務上かなり助かる改善点です。

佐々木:ご要望をいただきありがとうございます。インタビューの目的や文脈を受け手に伝えられるような設計は、弊社の新プロダクト「コルクトーク」でも対応を進めているところです。
引き続き一緒に改善していけることを楽しみにしております。本日は貴重なお時間をいただき、ありがとうございました。

SaaS比較メディアにとって、AIの普及によって高まる「独自性のある一次情報」の重要性。

スマートキャンプ様の事例は、AIインタビューが取材・記事化ワークフローの現場においてどのような変革をもたらすかを具体的に示しています。

単純な工数削減だけでなく、インタビュースキルの属人性解消、ベンダー向け取材への活用、そして取材からAIによる記事化までの一気通貫ワークフローの確立。

人間が行うべきことを設計・品質管理に集中させ、収集と整理をAIに担わせるこの構造は、コンテンツ制作にとどまらず、工数課題を抱えるあらゆる組織にとって、一つの解答を示しています。