
弊社Quest Researchは、医療業界のマーケティングリサーチにおいて、長年にわたり実績を持つ 株式会社 社会情報サービス(以下、SSRI)と業界特有の限界を突破すべく、「コルク」のAIインタビュー活用に関するパートナーシップ契約を締結しました。 「人間の定性調査」と「Web定量調査」のギャップをAIはどう埋めるのか。導入の背景や現場のリアルな実感について、SSRIの皆さまに伺いました。

【インタビュイー プロフィール】
傳農氏: 専務取締役
野崎氏: Strategic Research & Insights 局 主査/副局長
庄田氏: Collaborative Research 局 主査 兼 AI Solutions 部 リード
野崎氏:私はリサーチャーとして、定性調査・定量調査の企画設計から実査、最終的なアウトプットまでを一貫して担当しています。他社では分業化されていることが多いのですが、弊社は一人のリサーチャーが最初から最後まで中心となってマネジメントする体制をとっています。私自身、モデレーターを兼任することもあります。
庄田氏:私も野崎と同じくリサーチャーの立場で、主に企画設計などを担当しております。また、社内のAI活用推進担当としての役割も担っています。
傳農氏:私は専務として、医療業界をクライアントに、PMR(プライマリーマーケットリサーチ)やHOR(アウトカムリサーチ)、データベースプロダクト、コンサルティングなどの事業全般を見ています。このリサーチ業界には40年ほどおりまして、もともとは医療以外の消費財リサーチなども担当していましたが、当時の創業者の意向でメディカル領域に特化するようになり、現在のメディカル分野の専門的な体制に至っています。

野崎氏:きっかけは「定性調査を50件クイックに実施したい」という依頼でした。多忙なドクターのスケジュールを調整して50件行うのは、通常1ヶ月以上かかる大変なプロジェクトです。プロセス自体を短縮できないかと考えていたタイミングでコルクのAIインタビューを知り、興味を持ちました。
南:リクルートやスケジューリングが一番のネックなのですね。簡単になれば、もっと多くの方に話が聞けるということでしょうか?
野崎氏:おっしゃる通りです。ドクターは日中とてもお忙しく、日程調整が難航します。24時間いつでも自分のタイミングで回答できる仕組みがあれば、対象を広げられると考えました。
南:また、弊社でも医療系のお客様からは「経験のあるモデレーターはいますか?」とよく聞かれます。モデレーター不足も課題として感じられていらっしゃいますか?
傳農氏:それは業界の永遠の課題です。疾患や薬剤、作用機序が全く異なるため、対応できる経験豊富なモデレーターが限られ、特定の人に指名が集中してしまいます。クライアントからの「意思決定のスピードを上げたい」という要望に対し、従来の手法では限界を感じていました。

野崎氏:大きかったのは「特定のパネルに依存しないSaaSツール」である点です。一般的な消費者パネルでは対象者にリーチできないため、自社保有の独自パネルと組み合わせて柔軟に使えるツールが必要でした。
南:ヘルスケア特化ならではの理由ですね。他に評価いただいた点や、導入時の懸念はありましたか?
野崎氏:「音声でのやり取り」ができる点は高評価でした。多忙なドクターに大量のテキスト入力を求めるのは負荷が高すぎるため、声で手軽に回答できる仕組みは相性が良いです。今後は、音声だけでは考えがまとまらない時のために、タイプ入力で補足・修正できる機能が追加されるとさらにありがたいですね。
庄田氏:懸念としては、専門用語の認識精度がありました。専門用語を含めて納品前のチェック作業は、内容を把握していないとゼロベースからの確認になり膨大な負荷がかかります。コルクは文字起こしに加え、AIによる自律的な深掘りも行うため、意図しない方向に会話が進まないか、チェック負荷をどう下げられるかに期待と不安を持っていました。 また、医療リサーチ特有の「有害事象(AE)報告」や個人情報の確実なチェックについては、コルクやAIでの完全な対応がまだ難しい部分もあるため、今後の機能アップデートに強く期待しています。

野崎氏:導入当初は専門用語の誤変換もありましたが、要望して実装いただいた「辞書機能」に薬剤名などを登録してからは、精度が劇的に向上しました。現在は辞書で登録した用語に関しては、ほぼ間違えることなく、ボソボソとした話し方であってもしっかり認識してくれます。
南:ありがとうございます。ご要望をもとに裏側の機能改善をスピーディーに行えるのは弊社の強みだと思っています。
庄田氏:現在非常に有効なのが「定性調査のプリテスト(スクリーニング)」としての活用です。 対面インタビューは10名程度と限られるため、事前にAIインタビューを実施し、「求めるインサイトを言語化できるか」「正しい対象者か」を見極めた上で本番のリクルーティングができるようになり、調査全体の質が大きく向上しました。
南:本命のインタビューの精度を上げるためのスクリーニングですね。お客様への提案時にはどのように案内されていることが多いでしょうか?
野崎氏:定量調査の自由回答欄の代わりにAIインタビューを併用するセット提案も増えています。 弊社では、コルクを活用したこの新たな調査を「AIスマートヒアリング」という名称でクライアントにご案内しているのですが、これまでは予算の都合で定量か定性のどちらかになりがちでしたが、コルクのAIインタビューを使えば「定量的な広さ」を集めつつ「AIによる深掘り」でインサイトも補完できるため、提案の幅が広がりました。 クライアントからも「思った以上に精度の高いデータが取れるね」と驚かれています。

野崎氏:弊社として目指すのは「定性の深さ」と「定量の広さ」の“良いとこ取り”だと考えています。 ただ、AIの精度が上がっても人間のモデレーターが不要になるとは考えていません。表情の変化から機微を汲み取る対応は、人間のモデレーターならではの領域です。本当に詳しく知りたい部分は人が担い、広範なインサイト収集はAIに任せる「棲み分け」が重要だと思っています。
庄田氏:社内のAI活用を推進する立場としては、インタビューを受けるドクターやクライアント側など、こうしたAIツールへの受容性がさらに高まることを期待しています。 世の中のAIリテラシーの向上を見据えつつ、「AIを駆使するとここまで精緻なアウトプットが出せる」ということを我々自身がしっかりと実証し、業界の新たなスタンダードとして広めていきたいですね。
傳農氏:現在の市場調査は「大量の定量調査」と「少数の定性調査」に二極化していますが、常にインサイトを求められているクライアントの真のニーズはその“間”にもあると感じています。 コルクは無理にヒト対ヒトのインタビューの代替を目指すのではなく、「定性と定量のスキマを埋める第三のドメイン」として普及していくと確信しています。 また、AIが相手だからこそ気を遣わずに本音を引き出しやすいという独自のメリットもあります。まさに庄田が言うように、業界全体でツールの受容性を高めていくことが鍵になりますので、ぜひQuest Researchさんと共に、医療業界の「AIリテラシー」を高める啓発プロジェクトを推進していきたいですね。
南:大変心強いです。弊社も引き続き、システムの精度向上とスピーディーな機能改善を進めてまいります。本日はありがとうございました。
高い専門性と厳密な正確性が求められる医療業界のリサーチにおいて、コルクのAIインタビューは「人間の代替」ではなく、「定性と定量のスキマ」を埋める新たなピースであることがSSRI様の事例から示されました。
長年の課題であったリクルーティングの壁や、属人化によるスピードの限界を突破し、広さと深さを兼ね備えたインサイトを迅速に引き出す。AIインタビューという新たなドメインの確立は、医療領域にとどまらず、深い顧客理解を求めるすべての業界において、事業開発やマーケティングのあり方を大きく変える可能性を秘めています。