事例インタビュー

「見えない資産」をデータで可視化し、経営を動かす。 — NECが挑む、データドリブンブランディングの裏側

日本電気株式会社(以下、NEC)は、ブランドを企業の持続的成長を支える経営資源と位置づけ、その価値の可視化と向上に戦略的に取り組んでいます。
同社のブランドエクイティマネジメント室は、「若年層向け認知度調査」および「企業の信頼に関する3カ国向け調査」を実施するにあたり、Quest Researchにて定量調査を実施し、AI定量分析プロダクト「コルクサーベイ」の活用により高速かつ高品質な意思決定を実現しました。

複雑な調査要件とスピードが求められる中、いかにして社内を動かす「良質なインサイト」を引き出し、データドリブンブランディングを前進させているのか。プロジェクトを牽引したお二人に伺いました。

日本電気株式会社(NEC)

日本電気株式会社(NEC)

コルク
コルクサーベイ
目的・課題
  • 企業の持続的成長を支える「ブランド価値」の定量化と継続的な可視化
  • 従来調査におけるリードタイムの短縮とコスト課題の解消
  • ローデータ集計の工数削減と「深掘りポイント」の早期発見・効率化
効果
  • コストと期間のバランスが取れたスピーディな実査とダッシュボード分析の実現
  • 「クラスター分析」によるターゲットの解像度向上と社内共通言語の獲得
  • 複数部署の目的を統合した調査設計と、国内外における「信頼の源泉」の明確化

■ ブランドという「見えない無形資産」を共通言語化し、経営に活かす

【インタビュイー プロフィール】
植村 優哉 氏:
ブランドエクイティマネジメント室 ディレクター
福嶌 優斗 氏:ブランドエクイティマネジメント室 スペシャリスト

─ まずは、皆さまの自己紹介と、ブランドエクイティマネジメント室のミッションについて教えてください。

植村氏:ブランドエクイティマネジメント室のディレクターをしております、植村です。当チームは、NECブランドを「企業の持続的成長を支える経営資源」として捉え、その資産価値の分析と企業価値向上への活用をミッションとしています。

現在「無形資産経営」が重要視されていますが、私たちはその重要なパーツとしてブランドを捉え、まずは可視化させて機能させようという狙いを持っています。そのため、ブランド部門の中だけにとどまらず、同じ無形資産の代表的な領域である人事や知財の部門とも連携しながら活動を行っています。

福嶌氏:同チームの福嶌です。私は事業部門での事業計画などを経て、現在のブランドの部隊に異動してきました。ブランドは目に見えなくてふわっとしているものなので、資本として適切に管理し、価値を向上させていくためには、やはり可視化されている必要があると考えています。

具体的に取り組んでいることとしては、会計バックグラウンドも活かしながらブランドの価値を金額換算するブランドバリュエーションや、今回のような調査などを活用し「現在のNECの認知度はどれくらいか」「親近感はどうか」といったような、ブランドの体験価値を具体的な数字に落とし込むことでブランドを管理可能な資産にすることを目指しています。

■ 従来の調査手法の課題と、コルクサーベイ活用の決め手

ブランドエクイティマネジメント室 スペシャリスト:福嶌 優斗 氏

─ 企業価値の定点調査など多岐にわたるデータを扱われる中で、分析作業の効率化やレポーティングにおいて、これまでどのような課題を持たれていたのでしょうか?

福嶌氏:まず調査のリードタイムにかなり課題があると感じていました。これまでの調査ではサンプルを回収するだけでも数週間かかり、もう少し短くなればいいなと思っていました。また、十分なサンプル数を集めようとするとどうしてもコストが高くなってしまう点もネックでした。

もう一つは、その後の分析とレポート化です。レポートを自社で作成したり、クイックレポートなどを求められる際にローデータを扱うとなると、「どこに目星をつけて分析していくか」が難しく、一旦すべてを集計し当たりをつけてから深掘りしていくため、非常に時間と手間がかかっていました。

川﨑(Quest Research):元々は植村さんから、データの可視化やレポート化の効率化に関するご相談をいただいたのが最初のきっかけでしたよね。そこから今回の調査をご相談いただくに至った背景や、パートナーとして弊社を選んでいただいた「決め手」は何だったのでしょうか?

植村氏:価格と期間のバランスが非常に良かったのが大きいです。また、先述の「深掘りポイントの当たり」をつける作業において、コルクサーベイは集計がパッと簡単にできて非常に扱いやすく、先にデータを確認できる点がとてもありがたかったです。

導入にあたっては、「SaaSのシステム提供だけで終わらず、しっかりとした調査設計や支援が受けられるかどうか」も重視していました。

私たちの組織には、「新しい技術やアプローチに自分たち自身が積極的に触れていくべきである」というカルチャーがあります。なので型化された提案ではなく、Quest Researchのように様々なものを組み合わせて新しいアプローチでサーベイを行っている方々と仕事をするべきだと思い、御社ならではのプラスアルファのご提案を期待していました。

■ 期待を超える「提案力」と、複雑なプロジェクトの推進

弊社 リサーチャー山本(写真左)、川﨑(右)

─ 今回、「若年層向け企業ブランド調査」と「企業の信頼に関する3カ国向け調査」を実施されました。それぞれどのような背景や仮説があったのでしょうか?

福嶌氏:若年層調査については、NECは若年層からの認知が年々下がっているというブランド上の課題感がありました。就職を控えた世代も含めて、NECがどのようなポジションにいるのかをしっかりデータで可視化し、採用目線だけでなくブランド目線で打ち手を検討したいと考えました。

信頼調査については、一口に「信頼」といっても、国や場面によって重要視される要素が異なるのではないかと考えていました。漠然とした「信頼」という言葉で終わらせず、NECの信頼の源泉や要素を把握し、グローバルで他社とも比較することで、国ごとに合わせた施策を打つ必要があると感じていたのが背景です。

川﨑:若年層調査では、弊社から学生を価値観で5つに分類する「クラスター分析」を追加提案させていただきました。当初の予定にはなかったこの提案を採用された理由と、結果に対する社内での評価はいかがでしたか?

福嶌氏:この分析は結果として非常に面白く、レポートにも掲載して経営層にも報告しています。ご提案いただいたクラスター別の結果は、非常に印象的なインサイトで、社内でも「腹落ち感がある」と好評でした。

例えば、アクティブ型の若年層は弊社の認知もすごく高いのですが、好意度(憧れ度)は他と比べて少し低いという結果が出ました。一方で、安定志向型やバランス型、多様志向型の人たちからは「認知は低いけれど憧れる」といった傾向があることが分かりました。

社内でもこの結果に反響が大きく、単に“若年層”という曖昧な言葉で議論するのではなく、クラスター別の傾向を数字で見えるというのは1つ大きな成果でした。ブランディングチームとも共有し、社内の共通認識を作るための良い材料になっています。

─ グローバル調査は、「信頼」という見えにくいものを要素分解し、AIやDX特化で日米英の差異を浮き彫りにする複雑な調査でしたが、弊社の設計やプロジェクト進行はいかがでしたか?

植村氏:複雑かつ専門的な調査で、正直、回答者がどの程度集まるのか不安に思っていた面もありました。しかし、回答者側の属性提案など的確に対応いただき、短納期かつコストも抑えたうえで実施でき、満足しています。

また、この調査はAI倫理・デジタルトラストを担当する部門など、3部署が連携して進めるプロジェクトでした。それぞれの部署が取りたい設問の粒度や思惑が異なる中で、それらをうまくコントロールし統合してくれた上で、調査設計から実査まで対応いただけたのは本当に助かりました。

■ 第三者データがもたらした「サプライズ」と社内バイアスの打破

ブランドエクイティマネジメント室 ディレクター:植村 優哉 氏

─ 調査結果をご覧になって、事前に立てられていた仮説と比べて「期待していなかったがサプライズだった」という発見はありましたか?

福嶌氏:若年層において、NECの認知自体は想定していたよりも低くなかったことです。個人的には、どうしても自分たちの課題にばかり目が向き、「ここがダメだ」と過剰に悲観的に考えてしまうバイアスがかかっていたのかもしれないと感じました。数字として客観的な結果が出たことで、悲観的になりすぎず、そこからさらに数値を上げていく前向きな議論ができるようになったのは大きな気づきでした。

植村氏:信頼調査では、信頼を得るための「タッチポイント」が国内外で大きく異なる点が非常に面白かったです。日本では、直接の商談やアフターフォローが重視される傾向がありますが、海外では第三者評価が重要になるという結果が出ました。こういった明確な差を把握したうえで、施策に落とし込んでいく必要があると強く感じました。

─ 今回のプロジェクトを通じて得られた「社内に良質なインサイトを届けるための運用のコツ」があれば教えてください。

福嶌氏:レポートとして発信するだけでなく、AIを駆使してレポートを音声化し、音声コンテンツとして発信するといったこともやっています。見る人、受け取る人に合わせた入り口をたくさん増やすことが大切だと思っています。

植村氏:まだ道半ばではありますが、社内の関心ごとや潮流、届けたいターゲット層のニーズに合わせてデータを提供する「ニーズドリブンなデータ提供」をさらに意識していく必要があると考えています。データと実際に使う人の課題をどう翻訳してマッチさせるかが重要ですね。

■ データ活用を日常業務に落とし込む、今後の展望とQuest Researchへの期待

ブランドエクイティマネジメント室 スペシャリスト:福嶌 優斗 氏

─ 今後、ブランドエクイティマネジメント室としてどのように企業価値の向上やグローバルでの信頼構築に貢献していきたいとお考えですか?

植村氏:目に見えない「ブランド価値」をデータで可視化する基盤は整いつつあります。今後はこれらを活かし、ブランドデータと人事や知財など他の領域のデータを掛け合わせてさらに価値を出していきたいです。

また、ブランドを体現するのは「人」であることがデータからも明確になっています。そのため、ブランド部隊だけでなく事業部門など広く社員にデータを浸透させ、ステークホルダーとの持続的な関係性を築き、それを可視化していきたいと考えています。

─ 継続的にブランド価値をモニタリングしていく上で、既存ツールの運用やレポーティング業務において、まだ解決したい課題などはございますか?

福嶌氏:どんどん減ってきている実感はありますが、それでもまだレポート(PPT)作成の文化が残っているので、ダッシュボードベースでの会話ができるようになると、すごくいいなと思っています。

また、設問同士の掛け合わせや深掘りをしていくために、どうしてもまだExcelなどのローデータベースの分析作業になってしまう現状があります。そういったところがもっと効率化できるといいなと思っています。

─ 弊社の今後のサポートやコルクサーベイに対して、ご期待されることがあれば教えてください。

福嶌氏:レポートを作る際、我々としてはデータを見せるだけでなく「こういったことが考えられると思います」という提案まで伝えなければならないと考えています。ただ、その際、「これって本当に有意なんだっけ?」「このデータから本当にそれが言えるのか」と不安に思うことがあるので、それが統計的に「合っています」と裏付けてくれる機能や、瞬時に確認できる機能があるとすごく良いなと思います。

植村氏:大がかりな意思決定のためだけでなく、日々の「これを知れば今悩んでいることが解決できそうなのに」といった場面で、ライトに調査設計ができ、翌日にはレポートが上がってくるような状態が理想ですね。

また、施策を考える際は調査データと他のオープンデータ等を組み合わせて深掘りすることが求められるため、仮説の裏取りまでコルクサーベイ上で完結できればさらに効率化できると思います。同時に、内部だけの視点や知見ではどうしてもバイアスがかかるため、人的サポートという意味では、忖度ない第三者目線でもう一歩踏み込んだインサイトを届けていただけることに引き続き期待しています。

川﨑:ありがとうございます。現在私たちが開発に取り組んでいるのが、システム上でグラフ設定をすればAIがサマリーを自動でまとめてくれる「レポート自動化支援」機能です。また、今回いただいた「統計的な裏付けを確認できる機能」や「オープンデータとの組み合わせ」といった貴重なご意見も踏まえ、皆様が日常業務の中でよりスムーズにデータ活用と意思決定を行えるよう、今後もより良いサービスをお届けできるよう努めてまいります。

「ブランド」や「信頼」といった無形資産をデータで可視化し、経営を動かす共通言語へ――

NEC様の取り組みは、社内に無意識に存在するバイアスを打ち破り、客観的で前向きな議論を生み出すための重要な第一歩となります。

「誰もが日常業務の中で自然にデータに触れ、スピーディにアクションへ繋げられる状態」を目指す同社の挑戦は、無形資産経営を推進するすべての企業に対して、新たなブランド戦略のあり方を提示しています。

Quest Researchは、AIを活用したレポート自動化やシステム開発といった「テクノロジーの進化」と、プロフェッショナルとしての「人的な伴走支援」の両輪で、NEC様をはじめとするすべてのお客様の事業成長に貢献し続けてまいります。